連合赤軍

そして誰もいなくなった

「10人のインディアンの少年が食事に出かけた。 ひとりが咽喉を詰まらせて9人になった。 9人のインディアンの少年が遅くまで起きていた。 ひとりが寝過ごして8人になった。 8人のインディアンの少年がデヴォンを旅した。 ひとりがそこに残って7人にな…

クローズド・サークル

私はミステリー・ファンである。 特に高校時代にはイギリスの作家アガサ・クリスティーの推理小説の全作品を読破するほど夢中で読んだ。 他にフランスの推理作家ジョルジュ・シムノンのメグレ警視シリーズも大体読んだ。 アニメ『名探偵コナン』の映像に 「…

いきさつ

最近、連合赤軍事件をテーマにした卒業論文を書きたいという大学生が多いそうだ。 そういえば私も19年前のちょうど梅雨空の下で、週末になるとあの事件を追って国会図書館の新聞閲覧室で連合赤軍事件が起きた当時の新聞記事を調べていた。 連合赤軍事件を調…

視点と論点

連合赤軍の幹部であった寺岡恒一さんの弟様は 成田闘争に参加したそうだ。 寺岡さんのお母様は、恒一さんを凄惨な手口で命を奪われ、その上弟様まで同じように過激な活動の果てに命を絶たれるのではないかと悲観したそうだ。 学生運動が盛んだった当時、私は…

40年の重み

デパートで群馬県の物産展が開催されていた。 その中に「水沼うどん」を販売しているコーナーがあった。 あの倉渕村の特産品だとすぐに分かった。 販売員は倉渕から来たそうだ。 倉渕村は今では高崎市に併合されて村から町に変わったそうだ。 連合赤軍事件で…

三猿

日光東照宮に三猿と呼ばれるレリーフがある。 「見ざる、聞かざる、言わざる」になぞらえたものだ。 これは子育ての過程における教訓を意味しているという。 つまり子どもに有害なものを見せたり聞かせたり言ったりすべきではないという教えが込められている…

偲ぶ心 悼む気持ち

ご遺族にとって、故人を偲ぶ心と、純粋な気持ちで 追悼することが、いかに重要であるか、 寺岡恒一さんのお母様のご様子からも察することができる。 今年の2月ごろに、雪野建作氏から連合赤軍事件の40年目の追悼集会の連絡があり、『証言連合赤軍』という冊…

沈黙の証人

連合赤軍事件当時の新聞記事に、 「殺した者も殺された」という見出しがあった。 仲間のリンチに加担していたメンバーも、 「総括」の槍玉にあげられて殺された者もいた。 リンチで命を奪われた12名の若者たちの名前は皆 呼び捨てで表記されて全員指名手配犯…

山の頂上から

山の頂上に立つと、360度の大パノラマが広がり、 下界の景色全体が一望に見渡せて、今まで見えなかった遠くのものまで見えてくる。 逆に今まで大きく見えたものがはるか遠くに小さく見えることもある。 人生もある程度の年月を重ねると幅広い視点で 多角的に…

同志の証言 

先日お会いした雪野建作氏は、寺岡恒一さんの大学の同級生であり親友でもいらした。 お会いすることになった時は 首尾よくお目にかかれるか 不安だったが、あの当時の 写真の面影がそのまま残っていらしたので、すぐにお会いできた。雪野氏は寺岡恒一さんと…

俳優の証言

先日、雪野建作氏にお会いした際に、4年前に公開 された映画『実録・連合赤軍あさま山荘への道程』で、寺岡恒一役で出演した佐生有語氏のアルバムもご覧になっていただけた。 雪野氏は佐生氏が寺岡恒一さんによく似ているとおっしゃっていらした。 あの時代…

全体像と素顔

昨日、雪野建作氏にお会いすることができた。 雪野氏は寺岡恒一さんと行動を共にしたかたで、 今も連合赤軍事件の全体像を残す会を主催していらっしゃる。 今まで事件を起こした当事者が書いた手記などを読むことがあったが、正直なところ、保身や責任転嫁や…

節目の年

今日、寺岡恒一さんのお母様にお会いした。 今までのように、午前に恒一さんの墓参をしてから お宅を訪問した。 霊園の桜並木のつぼみが大きくなりかけていた。 やはり季節は巡ってくるのだと感じた。 この2月、寺岡さんのところに、今年は連合赤軍事件から…

名は体を表さず

民主党の小宮山洋子氏や、歌手の長山洋子の名前は「ようこ」と読む。 しかし連合赤軍の主犯者であった永田洋子の名前は「洋子」と書いて「ひろこ」と読む。 それは、永田の両親が、果てしなく広い太平洋のような広々とした心の人間になってほしいと願って、 …

大寒に思う

連合赤軍の幹部であり、1月15日頃に命を絶たれた寺岡恒一は、高校時代に自分の性格について、長所は「真面目」、短所は「消極的」と自己分析している。 当時の高校の校長先生は「あのような何も問題のない学生はめずらしい」と言っている。 恒一さんのお母様…

40年前の事件

今日は真冬らしく、どんよりと寒々とした日だった。 雲が低く垂れ込めて、今にも雪が降りそうな重々しい空だった。 この時期になると連合赤軍事件のことを思い出す。 40年前の今頃、山岳アジトで凄惨なリンチが行われ、 多くの若者たちの命が奪われていった…

生きがい

"A man takes a job, you know, and the job becomes what he is." "You do a thing and that's what you are." "You get a job, you become the job." 「ある仕事に就いたらその仕事がその人自身の姿になるんだ」 「君が何かをすれば、それが君という人間そ…

心の琴線

連合赤軍事件の主犯者である永田洋子は、 瀬戸内寂聴と手紙のやりとりをしていたことがあった。 瀬戸内寂聴は永田洋子のことを「幼い」と評した。 「彼女の手紙には必ず絵が描いてあって、 おいしいものを食べた、とか書いてくる。 これが革命戦士を名乗る活…

失敗から学ぶ

There could be no honour in a sure success, but much might be wrested from a sure defeat. T.E. Lawrence "Revolt in the Desert" 「確実な成功をおさめても何の名誉も得られないだろうが、確実な失敗から得られるものは多かろう」 T.E. ロレンス『砂漠…

秋の日の再会

久しぶりに、寺岡恒一さんのお墓参りと、 寺岡さんのお母様にお目にかかることができた。 寺岡さんのお母様もお元気そうで、嬉しく思った。 この春は震災の影響で落ち着かなかったそうだ。 来年は早くも連合赤軍事件から40年になる。 私は今までもあまり事件…

健全な精神と身体

「健全な精神は健全な肉体に宿る」 という言葉がある。 連合赤軍事件の主犯者であった永田洋子は バセドウ病を患っていた。 この病気は甲状腺機能が異常に亢進するため、 疲れやすくイライラして怒りっぽくなるといった症状が上げられる。 永田洋子が山岳ベ…

あさま山荘の落とし前 事実は語る

映画『実録・連合赤軍あさま山荘への道程』の中で、あさま山荘の管理人が「私を裁判には呼ばないでください」と、坂口弘に懇願する場面がある。 このセリフを聴いた瞬間、この映画は正に「実録」の名のとおり、詳細にわたって事実のみを描いた作品であると分…

あさま山荘の因果

人の巡り合せは時として非常に奇異なことがある。 まるで神様が仕組んだシナリオのようにも思える 出来事がある。 そのひとつが、あさま山荘の管理人と連合赤軍との運命の出会いである。 連合赤軍による、あさま山荘人質事件で、 人質となった山荘の管理人は…

血液型

日本人は血液型と性格を結び付けて考える人が多いという。 そうなると人の性格は4種類しかないということになる。 それでは骨髄移植を受けて人生の途中で血液型が変わった人は、その時点で生まれ持った性格までも変わってしまうというのか?例えば1971年の大…

2年前の出来事

2年前のこの日は、実に思い出深い日であった。 映画『実録・連合赤軍あさま山荘への道程』で、寺岡恒一役を演じた俳優の佐生有語氏と、写真家の古田登紀子さんと、ご一緒して、寺岡さんの墓参と恒一さんのお母様にお会いできた日である。 今日はあいにくの雨…

光明

連合赤軍の寺岡恒一が、幹部でありながら 分派主義と言われて「総括」され、 リンチで命を奪われた一因が、生後間もない乳幼児を持つ活動家夫婦を最高幹部の永田洋子に無断で仲間に加えたことにあった。 榛名湖管理事務所の丸岡和平さんも、 この幼女を一時…

time and tide…

あさま山荘事件において、息子が犯人グループの 一味として立てこもっているものと思い、 「最後まであきらめないで抵抗するのが日本人の特徴だ。しかし、時には潔く断念する勇気も必要だ」と、 必死で説得した寺岡一郎氏… せめてご存命のうちにお会いしたか…

あさま山荘 父と子 

「T君の死を知らぬ父上の呼掛けを 籠城の吾ら俯(うつむ)きて聞く」 坂口弘『歌稿』 この「T君」とは寺岡恒一のことである。 1972年2月19日に、軽井沢にある「あさま山荘」に、連合赤軍と思われる過激派数人が、人質をとって立てこもる事件が起きた。 山…

あさま山荘への道

1972年のこの日、 あさま山荘猟銃人質事件が起きた。 奇しくも1993年の同じ日に最高裁判決で、 連合赤軍の最高責任者であった永田洋子と坂口弘に死刑判決が確定した。 永田洋子は「判決文の短さに驚いた。 何も検討していないし肩すかしの感がする。最高裁に…

湖畔の宿で

1994年2月の榛名湖は、スケート客やワカサギ釣りの客でにぎわっていた。 前回訪れた紅葉の景色とは打って変わって雪に閉ざされて厳しい表情の榛名山が前方に見えた。 あの山の裏側に、残酷極まりない凄惨な犯行現場があったのかと、身震いする思いがした。 …