偲ぶ心 悼む気持ち

ご遺族にとって、故人を偲ぶ心と、純粋な気持ちで
追悼することが、いかに重要であるか、
寺岡恒一さんのお母様のご様子からも察することができる。
今年の2月ごろに、雪野建作氏から連合赤軍事件の40年目の追悼集会の連絡があり、『証言連合赤軍』という冊子が送られてきたことを寺岡さんから伺った。
雪野氏は「連合赤軍事件の全体像を残す会」の発起人の一人でいらっしゃる。
寺岡さんは、あの事件の関係者とはずっと音信不通で、事件のことは遠い昔のことで、
もうすっかり忘れ去られていると思っていたが、40年経った今でも、事件を省みて
考えてくれていることや、追悼の気持ちに感心したご様子だった。
特に「連合赤軍の全体像を残す会」が発行している刊行誌 『証言 連合赤軍 −2− 
彼らはいかに生きたか』 には、亡き同志と行動を共にしてきた人たちが、
故人と一緒だったときの思い出話や、故人が生前はどんな人だったのかを語り、
その人柄を偲ぶ気持ちが伝わってきて、事件の関係者や故人と係わりのあった方々の
誠意ある追悼の気持ちが随所に感じられる貴重な証言である。
寺岡恒一さんのお母様も、恒一さんが首都圏だけでなく北海道などの遠くの方まで行って活動していたことを初めて知ったそうだ。
命を奪われた犠牲者のご遺族にとって、事件について言及することよりも、故人が生前
どのように生きてきたのか、どんな行動をとり、どんな足跡を残してこの世を去ったのかを知りたいのではないかと思った。
そして故人の人柄が偲ばれる思いをいつまでも忘れることなく心にとどめておきたいのではないのかと思う。
ご遺族にとって、事件のことを思い出すのは耐え難く辛いことだと思うが、
忘れ去られてしまうことはもっと残念で忍びがたいものであろう。
今年は連合赤軍事件から40年が過ぎた。
私は第三者であり部外者だと言われてしまえばそれまでだが、ある意味で連合赤軍事件に関わった一個人として、今後も志半ばで命を絶たれた犠牲者を悼む純粋な気持ちと、故人を偲ぶ心を忘れずに大切に持ち続けていきたいと思う。