俳優の証言

先日、雪野建作氏にお会いした際に、4年前に公開
された映画『実録・連合赤軍あさま山荘への道程』で、寺岡恒一役で出演した佐生有語氏のアルバムもご覧になっていただけた。
雪野氏は佐生氏が寺岡恒一さんによく似ているとおっしゃっていらした。
あの時代に寺岡恒一さんと行動を共にしてきて、恒一さんの素顔を知っている生きた証人というべきかたがおっしゃるのだから、確かであろう。
実際恒一さんのお母様も同じように感じられていらしたことを思い出した。
佐生有語氏は当時のことについて次のようなコメントを残している。


「2008年、俳優佐生有語は映画『実録・連合赤軍あさま山荘への道程』(若松孝二監督)
にて、連合赤軍幹部(旧革命左派)寺岡恒一役を演じた。
寺岡は1972年1月15日、連合赤軍幹部により不適切発言と分派主義を指摘され、

結果処刑された。23歳だった。
映画への出演がきっかけとなった”ご縁”と
そしてはじまった俳優と遺族の交流。
今回、佐生は寺岡のお墓参りに鎌倉を訪れた。
そして寺岡の実家に、37年の時が流れた今も
なにも変わることなく生活を続ける母親を訪問し、
尽きることのない貴重な会話を楽しんだ。
幸福な時間はゆったりと流れ、そして母親と佐生はお互いに同じ思いを強く感じていた。
”はじめてお会いしたとはどう考えても思えない”と。
映画が繋いだ俳優と遺族の貴重な交流から佐生は「母親の連合赤軍事件」を見た。
一般的に常識となり正しい知識とされる「権力側」の見解と認識。
少し踏み込んだところにあり、探さないと見えてこない「実行犯」の意見と思考。
そしてお会いすることではじめて見えてきた「遺族」、
特に母親の見た、感じた正直で素直な気持ちや感情。
それは映画に出演するだけでは佐生になかった視点であり、
大切な事件の側面でもあった。」


2009年4月23日(木)撮影:古田登紀子
佐生有語:『映画が繋いだ俳優と遺族の貴重な交流』


佐生有語氏が取り組んだ映画の撮影現場のことや、ロケ地で寺岡恒一さんの亡霊を見た話を思い出して懐かしい気分でいっぱいになった。

そういえば、この時佐生氏は、寺岡恒一さんはタバコを吸う人だったのだろうか、とか、
どんな声をしていたのか、と推測していたことを思い出す。
寺岡さんのお母様や雪野建作氏にお会いする機会をえられたのも、この映画のおかげであるし、佐生有語氏が寺岡恒一役で出演してくれたから、かけがえのない出会いと感動があった。
私もこのときの貴重な時間が今でもいとおしく思えてならない。