東は西

私が今までの人生で一番最初に見た映画はディズニーの『ジャングルブック』だった。
アニメとは思えないリアルで感動的な映画で今でも強く心に残っている。
後年この映画の作者がノーベル賞作家のキプリングだと知った。
キプリングの有名な詩に『東と西のバラード』がある。

"Oh, East is East and West is West, and never the twain shall meet.
Till Earth and Sky stand presently at God's great judgment seat;
But there is neither East nor West, Border; nor Breed, nor Birth,
When two strong men stand face to face, tho' they come from the end of earth!"
(Rudyard Kipling "Ballad of East and West")
「おお、東は東、西は西、そしてこの二つは決して出会うことはない。
 神の偉大な審判の席に、天と地が並んで立つ日まで。
 だが、二人の有力な人間が面と向かって立つときは、
 東も西もない。国境も民族も生まれもない。
 たとえ両者が地球の果てから来ようとも!」
 
日本が関ケ原の合戦をしていた1600年に、イギリスはインドに『東インド会社』を設立し
植民地支配を始めた。
その後イギリス政府は、インド生まれのイギリス人が書いたこの詩の冒頭だけを引き合いにして、東洋人と西洋人は全く相反するものと決めつけて、インドだけでなく中国やアラビア半島にも植民地政策を強化していた。
しかしキプリングが言いたかったのはこの詩の後半部分だ。
この詩が書かれた当時は日英同盟が締結された時代だった。
東の果ての日本と、西の果てのイギリスの両首脳が面と向かって出会った時には

東も西も国境も民族もない。
今日はアメリカの大統領が来日する。日米両首脳はどんな対話をするのだろうか?
こんな時には、東西の融和を高らかに詠んだキプリングのこの詩を思い出す。


キプリングの詩が書かれてから約半世紀の時を超えてリバプール出身のイギリス人が
東と西をテーマにした詩を書いた。

"East is east and west is west.
The twain shall meet.
East is west and west is east.
Let it be complete." (John Lennon "You Are Here")
「東は東、西は西、二つはきっと出会うだろう。
 東は西、西は東、それをやり遂げよう」(ジョン・レノン


地球は丸い。欧米など西側諸国も日本から見れば太平洋の東にある。
逆に日本だって欧米から見れば西に位置することもある。
確かに東は西で、西は東。結局東も西もない。
ビートルズの元メンバーだった故ジョン・レノンの心の広さ、度量の大きさを感じてやまず、地球規模での融和をcomplete(完成)させたら素晴らしいと思う。
今日出会う日米の首脳同士がどんな方向性を見出すのか気がかりだ。