真の勇気

「今ぼくに必要なのは、真の勇気のみです。」森恒夫『遺書』


1973年1月1日に東京拘置所連合赤軍の最高幹部の
森恒夫が自殺した。享年28歳。
1年前の2月に永田洋子と共に逮捕されて以来、
12名の仲間を凄惨なリンチで殺害した罪で、
今度は森自身が国の法律で裁かれる身となった。
森恒夫は時間の経過とともに自分の罪の重大さを認識して、裁判で死刑判決になることへの恐怖におびえる日々を過ごしていた。


「1年前の今日の、何と暗かったことか。この1年間の自己をふりかえると、
とめどもなく自己嫌悪と絶望がふきだしてきます。」森恒夫『遺書』


逮捕以来、自殺するまでの約10ヶ月間、森恒夫が自分の犯した罪の重さに苛まれ、
良心の呵責と自責の念にさいなまれ、もがき苦しんだ様子が伝わってくるように感じる。
森恒夫は逮捕されて以来、「全ては僕と永田さんの責任です。」と自白していた。
森恒夫の自殺を知った永田洋子は、哀悼の言葉もなく、「森さんはずるい。」と言った。
そして永田は「”総括”は、森さんが先に言い出したことで、私はそれに従うしか
なかった。」と自分の責任を亡き森恒夫になすりつけて保身をはかった。
森恒夫にとって真の勇気は、自ら命を絶って主犯者としての「落とし前」をつけて
責任を果たすことであると結論付けたのだろうか。


「自己の責任の重さに絶望…自らに死刑を下す。」森恒夫『遺書』