自責の念

中国映画『西太后』は、西太后の悪逆非道ぶりが
誇張されて描かれているが、その映画の中で、
自分よりも美しく長い手足を持ち、皇帝の寵愛を受けていた麗妃に嫉妬した西太后が、麗妃の手足を切断して甕に入れる場面がある。
映画の最後の場面で、甕に入れられた麗妃が苦しむ様子を見に来た西太后の前に、麗妃は楽しそうに歌を歌いながら運ばれてくる。
麗妃は西太后に「今の私には皇帝が愛してくれた手足はもうなくなった。
でもこの方が楽なのです。
それに比べて今のあなたは不安で夜も眠れないのでしょうね。
つらいのは、あなたのほうよ」と言った。
麗妃は、自分にむごい仕打ちをした西太后のほうが自責の念に苦しんでいる心理状態を見抜いていた。
被害者よりも加害者側の人間のほうの苦しみが倍増する。
ある人を傷めつければ逆にその分あるいはそれ以上に自分自身が傷めつけられ、惨めになるだけだ。
仮に故意ではなく過失であっても誰かを傷つければ、加害者側のほうがよりいっそう深く傷つくものだ。
連合赤軍事件で生き残った元メンバーも、事件を思い起こすたびに良心の呵責と自責の念で夜も眠れないほど苦しい時もあることだろう。
たとえ不本意だったとしても、あの時あの場所で実際に事件に関与したからには、残りの人生を事件の犠牲者と共に生きなければならないし、決して自分の記憶からは消せない事実であろう。

「どんなにつらくても生きて自分たちが起こしたことの意味を考えなければならない」(連合赤軍の元メンバーへの瀬戸内寂聴師のコメント)
これこそ連合赤軍事件に関与した元メンバーが取るべき最良の方法であり、犠牲者への供養につながるのではないかと思う。