恩師

私は毎月ペン字を練習して、競書を送っているが、そのペン字の先生の中に100歳になられるかたがいらっしゃる。
そのかたは高田深雪先生で、雅号は香雪先生とおっしゃる。
直接お会いしてご指導いただいたことはないものの、今まで多くのお手本を習わせていただいたのだから、私の恩師であることは確かなことだ。
何人かのペン習字のお手本を書いていらっしゃる先生方の中でも高田先生の書風が好ましく、いつも高田先生が書かれた課題を
選んで練習していた。
まさかこのような高齢のかただとは思えないほど流麗な筆致で、実年齢を知って非常に驚いた。
それに毎月のエッセイも楽しく、子どもの頃に御姉上様と百人一首に興じた話や
関東大震災を経験した時のこと、94歳で始められた俳句の話や古典の臨書に関することなど、ペン習字以外のことも感銘を受けた。
数年前、しばらく高田先生のお名前を見かけなくなったと思っていたら、
階段から転倒し骨折して数ヶ月入院なされて、さらには脳血管疾患で長いこと病床にいらしたとのことだった。
それでもまるで不死鳥のように復活して現役の書道家としてご活躍なさっていらっしゃる。
私もおかげさまでペン字の競書は無鑑査まで辿り着けた。
しかしいざ自分の作品を書こうとすると、まだまだ未熟でもどかしい思いがする。
誌上で自分の作品を諸先生方がご覧になっていると思うと、今の地位に恥じない作品に仕上げなくては、と心がけたい。
そういえばペン字のキイさんは最近誌上でお見かけしなくなったが、お元気でいらっしゃるのだろうか。
高田先生は5月18日から20日まで大船で100歳記念の展覧会を開催するとのことである。私も是非拝見したいと思っている。誌上での恩師に実際にお目にかかれたら嬉しく思う。