天才

フランスの数学者エヴァリスト・ガロワ(1811〜1832)は
決闘のため20歳の若さで生涯を終えた。
ガロワは5次方程式の解を証明した論文をまとめたが、
当時の数学者たちに認められなかった。
当時の数学のレベルよりもはるかにかけ離れていた
ガロワ理論は、ただの空想に過ぎないと
相手にされなかった。
それから50年後に別の数学者によってガロワ理論が証明され、
その天才ぶりが大いに評価された。
ガロワは生まれてくるのが早すぎたようだ。
数学者ガロワは革命家でもあった。
ガロワについて初めて知ったのは、ナポレオンとフランス共和政権について書かれた本の中でのことだった。
ガロワがフランス7月革命に参加した数学者で、決闘で命を落としたことを知り、
あまりの意外性に驚いた。
数学者は元来理論的なはずなのに、なぜ決闘で命を落としたのか疑問に思った。
ガロワは極端に気が短く、すぐ逆上し激高する欠点があった。
ガロワが急進的な革命思想に走り、女性問題に巻き込まれた挙句に決闘で倒れたのは、極端に激しい性格のためでもあった。

学生の頃、ガロワのような数学の鬼才といわれた祖父が興味深いことを言った。
ノーベル賞をもらったような天才と呼ばれた人は、実はかわいそうな人でもある。
天才は、ある分野の非凡な才能に恵まれて立派で素晴らしいが、
そのかわり普通の人が当然分かることが分からなかったり、
普通の人間が当たり前にできることができなかったりする。
人より並外れた能力を持っている反面、人より並外れて劣った部分がある不具な人だ」と、関数のグラフのような放物線を描いて数学的に説明した。
祖父は数学の才能を発揮して、長いこと電気技師として働いてきた。
私は祖父に難しい数学の宿題を助けてもらったことがある。
身内に数学が分かる人がいて、どれほどありがたかったことか。
残念ながら私は祖父のような数学のセンスを受け継ぐことができなかったが、

音楽は楽しむことはできた。
数学と音楽は兄弟関係にあるといわれるほど、あらゆる面において共通点が多く、
関連が深い。