カウラ 8月5日

オーストラリアのシドニー近郊にカウラという町がある。1944年のこの日、第2次世界大戦での日本兵捕虜収容所においての大規模な暴動事件があった。
日本は「玉砕」という言葉に象徴されるように生き恥をさらして捕虜になるよりは死んだほうが立派であるという考え方だ。
一方の欧米人の考え方は、生きて帰国すれば英雄になれるから捕虜になることは少しも恥ではなかった。
カウラの日本兵捕虜は1104名で、捕虜になったことを恥じ、偽名を使って収容所で暮らしていた。そのうちの545名が食事用のフォークやナイフを手に真夜中に脱走を企て、暴動を起こした。しかし結果は歴然、機関銃の前では成す術もなかった。
この暴動の死者は日本兵231名、オーストラリア側は将校を含む4名が犠牲となった。
この時の記録書に『カウラ日本人捕虜収容所』という本がある。
著作者は永瀬隆氏である。永瀬氏は、泰緬鉄道の連合軍捕虜収容所の通訳であった。
それを背景にした作品がアメリカで映画化された。
驚いたことに永瀬隆役を演じていたのも佐生有語氏であった。
その永瀬氏の著書を私が持っていたことに気づき、奇遇に思った。
本著ではクワイ河捕虜収容所とは逆の立場から見た連合軍と日本軍の捕虜の観点の違いを淡々と述べているが、あいまいな戦後処理しかしない日本政府に対して無念ともどかしさが伝わってくるような強い文面が随所に感じられる。
俳優の佐生有語氏は、どんな思いで永瀬隆役を演じたのか、ぜひ知りたいところである。

カウラ日本兵捕虜収容所

カウラ日本兵捕虜収容所