アンバランスの美学

明日がこの余部鉄橋の最後の渡り納めだという。
この後、新しい鉄橋に架け替えられる。
私は5年前にこの鉄橋を見ている。
兵庫県日本海側にある竹野海岸(現在の豊岡市)に行った時に立ち寄った。

竹野海岸は夏は海水浴場でにぎわい、
秋から冬にかけてはカニ料理を目当てに大阪や神戸からバスツアーが出るそうだ。
竹野海岸に行った目的は、竹野出身の書家、仲田光成(1899年〜2003年)の書道展とその記念館を見に行くためであった。
仲田光成先生の作品は、カミソリで裂いたような線がシャープで清々しさがある。
それぞれの作品のアンバランスな構成が斬新で、それでいて気品がある。
書道は調和のとれたアンバランスの美学である。
竹野海岸からそれほど遠くない所に、一切のアンバランスを許さず緻密に正確に設計された余部鉄橋がある。
41メートルの高さから日本海を見下ろしてきたこの朱色の鉄橋は確かに迫力があり
見ごたえがあった。
バランスが命の精巧な鉄橋と、アンバランスの美学とのギャップが面白く感じた。