Measure my song...逃げるが勝ち

スイミー』を書いたオランダ出身の童話作家レオ・レオニの作品にシャクトリムシが主人公の”Inch by inch"がある。
腹ペコのコマドリに食べられそうになったinchworm(シャクトリムシ)が「わたしを食べないでください。私は何でも測れる役に立つシャクトリムシです。
あなたの自慢の尾羽を測ってみましょう・・・ほら、5インチもありますよ」と言った。
尾羽の長さを測ってもらったコマドリは、シャクトリムシを、体の自慢の部分の長さを測ってもらいたがっている鳥たちのところへ連れて行った。
シャクトリムシは、フラミンゴの首、オオハシのくちばし、サギの足、キジの尾、ハチドリの体を測った。

ある朝シャクトリムシは、歌が自慢のヨナキウグイスに出会った。
ヨナキウグイスはシャクトリムシに「わたしの歌を測ってくれ」と言った。
シャクトリムシは「物なら何でも測るけど歌は測れない」と答えた。
ヨナキウグイスは「わたしの歌を測ってくれないのならお前を朝ごはんに食べちゃうよ」とシャクトリムシに言った。
このままではシャクトリムシはヨナキウグイスに食べられてしまう。
しかし名案が浮かんだ。
「とにかく測ってみるから歌ってよ」とヨナキウグイスに言った。
ヨナキウグイスは歌った。シャクトリムシは測りに測った・・・
少しずつ(inch by inch)ヨナキウグイスから遠ざかっていき、とうとう姿を消した。

この童話を詩人の谷川俊太郎が『ひとあし ひとあし』という表題で翻訳している。

危機に瀕した時は「三十六計逃げるに如かず」という戦略がある。「逃げるが勝ち」という言葉もある。
生きていく上で、時にはこの童話のシャクトリムシのような知恵が必要だ。

measureには「測る」の意味の他に「評価する」という意味もある。NHKの『紅白歌合戦』も、歌を測っていることになるのかもしれない。
ちなみにシェイクスピアの喜劇に”Measure for measure"『尺には尺を(しっぺ返し)』という作品がある。