風疹

今、風疹が大流行している。
私は幼児期に感染したから風疹の終生免疫を得ている。
風疹は三日麻疹(はしか)とも言われている。
その名の通り2〜3日ですっかり治った。
症状も軽かった。
高校時代に報道で風疹の流行が大きく取り上げられた時があった。
私はこんな軽い病気の何が恐ろしくてそんなに大騒ぎするのか分からなかった。
しかし、当時夢中だったアガサ・クリスティーの作品の中の『鏡は横にひび割れて』
(原作"The Mirror Crack'd From Side To Side")を読んで、風疹の怖さと悲惨さを
思い知らされた。
それと同時に自分の何気ない行動が誰かを不幸にしてしまう加害者にもなり得るかもしれないことや、人もうらやむような豪華な暮らしをしている人にも言い知れない悲しい過去を背負って生きているかもしれないことも、この小説から感じられた。
この『鏡は横にひび割れて』は、『クリスタル殺人事件』(原作は"The Mirror Crack'd)というタイトルで映画化されている。
往年の大女優の役を、名優エリザベス・テイラーが演じている。
私は映画化される数年前に、この作品を読んでいるので、ストーリーも登場人物も、もちろん犯人も知っていたが、映画の中で、事件解決のカギとなる大女優の「凍りついた」表情を、エリザベス・テイラーが見事に演じて、正に原作のイメージと一体化した見ごたえのある映画だと思った。
ちなみに風疹を英語でGerman measles(ドイツ麻疹)という。
なぜドイツなのか、なぜ複数形なのに単数扱いするのか不思議で興味深い。
しかし、たかが風疹されど風疹である。その病状の軽さが不幸をもたらす。
今のこの時期に『鏡は横にひび割れて』を読むか『クリスタル殺人事件』を見て、
風疹が伝染病であることを多くの人が認識して、流行が早く治まることを願っている。