筆跡

It seemed to me that every portrait drawing of a
strange-sitter partook somewhat of the judgement of God.

T. E. Lawrence "Seven Pillars of Wisdom"
「あらゆる他人の肖像画は、
何か神の裁きのように思える気がした。」
T.E.ロレンス著『知恵の七柱』


肖像画や写真のモデルになることを好んだロレンスは、
自分自身がどんな画像に写っているのか客観的な立場で知りたかったようである。
絵画や写真のモデルになった人は、どんな人なのか想像することがあるが、
人の筆跡にも、写真と同様「神の裁き」に似たものを感じる。
ただし筆跡の場合、ギャップが大きいことがある。
たとえば、巨漢といえるような大男が、小さくて消えそうな字を書いたり、
か弱そうな人が、筆圧の強い大胆な字を書いたりする。
文字を書く時には、その時の体調や感情が如実に表れる。
昔の歴史に名を残した人の自筆の書を見ると、
どんな状況下でこの手紙や書物を書いたのか、思いを巡らすのも面白い。
また友人や知人など身近な人からの手紙も同じことが言える。
自筆の書は、その人の心の在りかを克明に写し出す人生の足跡のように思える。