カウラについて

オーストラリアにも日本庭園があることを知った。
その頃戦争のドキュメンタリー映像ニュースを見た。太平洋戦争で、多くの日本兵の遺体を
大勢のオーストラリア人が埋葬している映像があった。それも皆沈痛な面持ちで、涙を浮かべていた兵士もいた。
敵地で最後まで勇敢に戦った日本兵たちを丁重に埋葬しているところだと、ナレーターが語っていた。その時の映像が、カウラの暴動だと知った。
そのカウラ日本兵捕虜収容所は戦後日本庭園になり、9月には桜が満開になるという。
カウラ日本人捕虜収容所で起きた集団脱走事件がオーストラリアでテレビ映画化された。あの映画で主演の日本兵を演じたのが石田純一だったことを後から知ったときは、
あまりにも意外で驚いた。
すさまじい形相で泥まみれの死闘の末に捕虜になっていく迫真の演技は、
いつもの涼しげな石田純一のイメージから大きくかけ離れていたからだ。
『カウラ日本人捕虜収容所』の著者の永瀬隆氏も、その映画について次のようなコメントを書いている。
「忘れもしない一九八七年八月十三日、偶然スイッチを入れたテレビせとうちで、
私は石田純一演ずるオーストラリア映画、カウラ事件の映画を見てしまったのである。
映画のラストシーンでめずらしくも生きようとする希望をもちながら異国の地で止むを得ず銃弾に倒れ、空しく死ななければならなかった兵に、私は流れ落ちる涙をこらえることが
できなかった。すごい感動で、あの自分が関係した泰緬鉄道を描いてアカデミー賞を七個も貰った”戦場に架ける橋”以上の出来栄えといまでも思っている。」
永瀬隆氏はクワイ河連合軍捕虜収容所で通訳を行っていらして、
その悲惨な状況を目の当たりになされた。当時のご自身の体験と重なって見えたのかもしれない。そしてこれこそ実際に戦地で惨事を見てきた人の生々しい肉声である。