ロープの向こう側とこちら側

連合赤軍による残酷極まりないリンチ事件が表面化した頃の新聞記事に「ロープの向こう側とこちら側」というタイトルがあった。私には特に印象に残った見出しであった。
遺体が埋められていると思われる場所には
1本のロープが張られ、ロープの向こう側では
12名の若者たちを一刻も早く地上に救出するために
多くの捜査員が必死で捜索活動を行っている。
それを固唾を呑んで見守っている家族や関係者たち…
この生と死を隔てる1本のロープの重みについて考えさせられた。
寺岡恒一さんは、3月13日に、犠牲者の中で一番最後に地上に救出されたという。
凄惨な手口で命を絶たれた状態の、そんな変わり果てたわが子と対面しなければならなかったご両親の心中はいかばかりであっただろうか?
寺岡恒一さんのお母様は、当時のことを淡々と、時には笑みさえ浮かべて話してくださったことがあるが、それはきっと想像も絶する修羅場のようだっただろうと思う。
こんな悲惨な事実に時効などありえない。
この残酷な現実を、事実として受け止めるのにどれほどの歳月がかかったか、

その胸中は、いまだに計り知れない思いがする。