事実を残して潔しとする

事故や事件が起きた時、関係者にとって最も望むことは事件や事故の真相であろう。
あの時あの場所で何が起こったのか、
ありのままの事実を知りたいと願うであろう。

連合赤軍事件において、事件の当事者や関係者らが口をつぐんで真実を語ろうとしなかったり、事件の責任者が、自分に都合良く事実をねじ曲げて保身と正当化を図ろうとしたことに強い不満と危機感を覚えた若松孝二氏は、映画『実録・連合赤軍あさま山荘への道程』を制作する決心をした。
若松監督が最も大切にしたのは「嘘を言うのはやめよう。きちんとした事実を残しておこう」「事実を残すために撮る」ということだった。
そして全てのシーンを事実に忠実に再現し、出演した俳優が事件当事者になり代わって真実を語った。
この映画に潔さを感じるのは「落とし前として、どうしても事実を残したかった」という
若松監督の気迫が浮き彫りにされているからであろう。
逆に、嘘偽りの記述や作品には後味の悪さを感じるものだ。

連合赤軍事件の全体像を残す会』の雪野建作氏も、同じ思いで会の活動を続けていらっしゃる。
山岳ベース事件で残酷極まりない手口で命を絶たれた寺岡恒一さんへの追悼文の中に、その確固とした意志が感じられる。

「寺岡恒一さんの御父様が事件後の、遺体を確認したその時の調書をつい先日、見たのですけれども、その中で「このようなことが二度と起こらないようにして欲しい」ということを書いておられました。
私もそういった気持ちで会の活動を続けて来ました。
きちんとした記録を残したい。ただそれによって同じことが起きないかというと悲観的ではあるのですけれども。
ただ当事者としては必ず残さないといけない。残せば少しは意味があるのではないかと、考えて活動しております。」
雪野建作氏の手記『優しい性格に鞭打って闘った、寺岡恒一さん』(『証言 連合赤軍2 彼らはいかに生きたか』より)

この文面からも潔白さが感じられる。
連合赤軍事件から40年が経ったが、これからもまだ解明されない埋もれた事実が明らかになることを祈りたい。
連合赤軍事件に時効など無い。