スクラップブック

17年前、連合赤軍による一連の事件記事を国会図書館
入手し、それをスクラップブックにまとめて仕上げていた。
あの当時、毎週のように国会図書館に行って事件当時の
新聞記事を集めた。当時のことを知るには新聞記事が一番信憑性があると思った。
スクラップブックは2冊にまとまって、私は時々それらを持って読み返していた。
山岳ベースのリンチ事件は身が凍りつくほど恐ろしく、
中でも寺岡恒一さんの凄惨な最期の場面はあまりにも残酷で、
ショックで正気を失いそうになった。
それでいて、いとおしさも募って、とても他人事とは思えなかった。
そんな12月のある日のこと、職場からの帰り道で交通事故にあった。
横断歩道を歩いている時に信号無視で右折してきた軽トラックにはねられ引きずられた。
その時ちょうど例のスクラップブックを抱えていたため、それが盾となって心臓が守られて九死に一生を得た。
そのスクラップブックには寺岡恒一さんのお母様からの信書や事件現場への足取りなどの記録も一緒にファイルしていたが、交通事故による損傷で判別不明になってしまって、今はもう存在しない。
あの当時知り得た事は、今では私の記憶だけが頼りだ。
しかし今思うと、あの連合赤軍の犠牲者が、
とりわけ寺岡恒一さんが私を守ってくれたような気がしてならない。
あのスクラップブックのおかげで命拾いしたのであるから。